ムートン・ロートシルト(中文では木桐莊と訳される)は、ワイン界で知らぬ者はいない存在です。現在の木桐莊は、ラフィット、マルゴー、ラトゥール、オー・ブリオンと並んで、ボルドー左岸の五大一級シャトーの一つに数えられています。シャトーは1853年の創設以来、すでに166年の歳月を歩んできました。百年以上続く老舗として、第一次・第二次世界大戦を生き延び、十年以上続いた幾度かの大恐慌も乗り越え、今日では衰えるどころか、ますます名声を高めています。ここではデータ分析は脇におき、フランス流ブランド・マネジメントの手法を雑談的に眺めながら、木桐莊、ひいてはボルドーの数多くの百年シャトーが、いかにして世代を超えて継承されるブランドの礎を築いてきたのかを考えてみます。
ブランドづくりはまず「個性」から:やはり私は私
木桐莊が他の四つの一級シャトーと大きく異なる点は、1855年の格付け発表時には、もともと二級シャトーとして格付けされていたことです。それから実に118年後の1973年になって初めて、木桐莊は歴史上初、そして唯一の「格上げ」された1855年格付けシャトーとなりました。1973年に木桐莊が二級から一級へと昇格した際、ラベルにはさりげなくこう一文が添えられました。Premier je suis, Second je fus, Mouton ne change.──「今の私は一級、かつて私は二級、しかしムートンは決して変わらない。」木桐莊のこの言葉は1855年制度への皮肉であり、同時に木桐莊の昇格に不満を持つ同業者に対し、「この昇格は当然の結果だ」と暗に示していると受け取る人も少なくありません。実際のところがどうであれ、解釈は人それぞれです。この含みのある、それでいて高らかに自己主張するフレーズをラベルに刻んだことが、ブランドに一層の個性を与えました。ブランドには、時代を超えて先導していくための個性と態度が不可欠なのです。

ブランドの深化:芸術を通じて意見を表明する
木桐莊が最初の「アートラベル」を世に出したのは、すでに1924年のことです。当時のオーナーであったフィリップ・ド・ロスチャイルド侯爵は、新進気鋭のポスター画家で、当時24歳だったジャン・カルリュ(Jean Carlu)にラベル・デザインを依頼しました。山羊のモチーフでシャトー名「Mouton」を、五本の矢の紋章でロスチャイルド家の家紋を象徴する、今日に至るまで人々の心に深く刻まれている木桐莊のイメージは、そうして生まれました。それは当時としてはきわめて前衛的なスタイルで提示され、1920年代の「前衛」とは、そぎ落とされたシャープな線と、強いコントラストをもつ色彩を積極的に受け入れることに他なりませんでした。

1924年の後、第二次世界大戦終結後の1945年になるまで、木桐莊が毎年異なるアーティストに依頼してラベル上部のアートワークを制作する取り組みが本格的に始まることはありませんでした。1945年以降、木桐莊のラベルが語るのは、もはやシャトーやヨーロッパの歴史だけではなく、一つの芸術潮流のバロメーターにもなっていきます。1945年と1946年のラベルでは、前者が第二次大戦の終結と連合軍の勝利を祝福し、後者が平和の尊さを強調しました。1973年と1975年のラベルでは、前者が著名なスペイン人画家ピカソの逝去(および同年の木桐莊の二級から一級への昇格)を記念し、後者はアメリカの風刺画家アンディ・ウォーホルに対するフィリップ侯爵の高い評価を表現しています。木桐莊のラベルは時代を切り取り、芸術を通して人々に思索と記憶を促してきたのです。

木桐莊は先ごろ、2017年ヴィンテージのラベル・デザインを発表しました。1945年から74年間、一度も途切れることなく毎年アートラベルを発表し続けてきたにもかかわらず、なお人々をあっと言わせるインパクトを生み出せるのです。今回発表されたラベルは、フランス人フェミニスト・アーティスト、アネット・メサジェ(Annette Messager)によるものです。ラベル上では一対の女性の乳房がひときわ目を引き、残りのデザイン要素としては「Hallelujah」という聖書の言葉がびっしりと並び、さらにワイングラスを手にした一つの手が描かれています。シャトーが公式に提示した解説を参照すると、2017年のラベルに描かれたさまざまな要素は、それぞれが象徴を担っています。乳房はペイガニズム的な自然崇拝を表し、おおむねフェミニズムと共通の源流を持つものとされています。「Hallelujah」は主流派キリスト教的世界観を象徴します。ワインは、宗教と自然の結晶なのです。先入観や、いわゆる「いやらしい」色眼鏡をいったん脇に置いてみれば、このフランス流の奔放で率直、そして世間の目をものともしない芸術観を、あなたは読み解くことができるでしょうか。

フランス流のブランド・マネジメントは、ビジネスと人間のマネジメントとの境界を意図的に曖昧にします。ビジネスやブランドの声を、内面の豊かな一人の人間を育て上げるような手法で形づくるのは、簡単ではありませんが、だからこそ世代を超えて伝えられるのです。ブランド・マネジメントを、単なる営利活動ではなく文化的遺産づくりと捉えることができれば、そのブランドが後世に残りうる可能性は大きく高まります。これこそが、フランスの百年企業が私たちに与えてくれる示唆なのです。
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